マルセイユの博物館・美術館3選

一年を通じて晴天の多いマルセイユ、春・夏はビーチに行ったり、レストランやカフェのテラスで食事やお茶をするのは心地良いですね。秋・冬もパリから来るとずっと暖かく外に出るのも億劫でなく観光が楽しめます。

ただし、あいにくミストラルに当たってしまった場合はどうしますか。この愛おしい響きを持つミストラル、実は北風のことで夏でも寒い強風が吹きます。マルセイユやモンペリエの北には山が連なっていますが、間に隙間があり(ローヌ川が流れている)、ろうと(じょうご)のように寒気が集中してしまうんですね。

こんな時は室内で長時間過ごせる博物館や美術館がお勧めです。マルセイユでお勧めの博物館・美術館ベスト3をご紹介したいと思います。この2つ異質なんじゃないかと思うかもしれないけれど欧州ではMuseumとかMuséeで一括りにしていますね。いくつか見学する予定であればCityPassを購入しておくと交通機関だけでなく入場料が全て無料になります(別記事「マルセイユ〜CityPassはお得?(検証)」参照)。

またこんな時はショッピング・センターに行ってしまうという手もありますね。これについては別記事「マルセイユのショッピング・エリア3選」を参考にして頂ければと思います。

マルセイユ歴史博物館 MHM

遺跡の横を通って階段を降りるとMHMの入り口がある

ショッピングセンター「サントル・ブルス Centre Bourse」建設時に、ギリシャ植民市時代、ローマ時代、また中世に至るまでの考古学的発見がこの地で相次いだことからマルセイユの歴史を扱ったこの博物館の創設が決定されました。考古学者および人類学者であるアラン・ニコラの協力を得て1983年にオープンしたのがこの博物館です。

ヴィユ・ポール界隈なので徒歩で簡単に行けるのと、この街が出来上がるまでの歴史的な層の連なりを肌で感じることができるのでお勧めです。

ギリシャ系のフォカイア人が植民市を築いたのがこの街の始まりということはガイドブックで知りうる知識ではありますが、実際に出土したギリシャの壺や皿(オレンジ地に黒の人物像、後期には黒地にオレンジの人物像が描かれたあれですね)の展示品により、実際にギリシャ人がここで生活していたことを想像することができます。実際にここで使われていた食器や装飾品な訳ですから。

またラテン語で書かれた墓石や壁の落書きでは確かにローマ文明がこの地に息づいていたことを物語っています。街並みの模型がありますが、古代ローマの一都市の雰囲気が感じられます。

長いこと閉館していたようですが、2013年マルセイユが欧州文化都市に指定されるのに合わせ改装が行われ、この年に再オープンしました。3500平方メートルの広さなので、じっくり見ると2時間位かかるかもしれません。各展示物の説明はフランス語と英語で記載されています。オーディオ・ガイドはフランス語、英語、イタリア語で用意されています。

マルセイユ観光を機会に、この街が辿ってきた歴史を時系列的に理解しておくのも良いですね。

タビリオ
美術館見学、けっこう疲れますよね。ショッピング・センター「サントル・ブルス」がすぐ側なのでここでお茶するという手もあるし、旧港に面したカフェで休憩という選択肢もありますね。

住所:2, rue Henri Barbusse 13001 Marseille。入館料:大人6ユーロ、小人3ユーロ。シティパス提示で無料。開館時間:10〜18時、月曜定休。


マルセイユ美術館 Musée des Beaux-Arts

マルセイユ美術館正面

マルセイユで最も美しい噴水3選」で1位に挙げたロンシャン宮(1869年建造)の一翼にあります。ロンシャン宮の敷地に入って堂々正面に見えるのは実は回廊で両翼の建物が宮殿になっています。

ニームの建築家アンリ・エスペランディウ設計の壮大な建物で、内部も天井が高く壮麗なので、建築を見るだけでも入ってみる価値があります。

マルセイユ美術館ではマルセイユおよび周辺の芸術家の作品をみることができます。

1720年ペスト流行時のベルサンス通りの光景

「1720年ペスト流行時のベルサンス通りの光景」

マルセイユの画家ミシェル・セール Michel SERRE (1658-1733、フランス・バロックの画家)の代表作です。この画家は1658年1月10日スペインのタラゴナに生を受け、幼くして孤児となり宗教施設で養育されます。12歳からイタリアで絵画を学び、17歳になるとマルセイユに居を定め、1733年10月10日に没するまでこの地で過ごしました。

欧州全体で猛威を振るったペスト、マルセイユも例外でなく1720年には数多くの市民が罹患し通りは死体で溢れかえりました。写真のないこの時代の様子が、このような絵画によって垣間見ることができる訳ですね。

もう1つ興味深いのは、現在凱旋門(エクス門)の建っている広場、ベルサンス通りの突き当たり、絵の上部に当たる部分ですが、門ではなく送水路Aqueducが描かれていることです。凱旋門建造は1825年に着工しましたが、まずこの高さ4.5メートルの送水路を打ち壊し、ジュール・ゲード広場を整備することから着手されました。これも、今はなき建造物がどのようなものであったかを知りうる重要な絵だと思います。

「不滅の精霊」像

不滅の精霊 Génie de l’immortalité

この可愛らしい坊やの像は、シャルディニーBarthélémy-François Chardigny(1757-1813、彫刻家)作です。シャルディニーはルーアンの大理石職人の息子として生まれ、パリのボザールで芸術を学びます。1782年には登竜門であるローマ大賞を受賞しました。

1720年のペストを乗り越えたマルセイユ市民の勇敢さを讃え、ブーシュ・デュ・ローヌ県のドラクロワ県庁は「ペストの柱 Colonne de la Peste」を中心に据えたエストランジャン噴水を作らせ、1802年9月に公開されました。「ペストの柱」はローマ風の柱の上に不滅の精霊像が乗せられたものです。

1835年に別の場所に移され、1865年から現在に至るまで図書館に付属した庭園に据えられています。「不滅の精霊」原型オリジナルがこの美術館に展示されているわけです。

少し分かりにくいかと思いますが、彫刻家はまず原型を創作し(現在美術館に展示されているもの)、これをもとに複製が作成され、エストランジャン広場の噴水に設置、のちに図書館付属の庭園に移されて現在に至る訳です。つまり原型オリジナルはこの美術館に、複製オリジナルは図書館付属の庭園にある訳です(ノアイユの交差点をサンシャルル駅とは反対の方向に進み、その先の大きな通りを左折すると壮麗な建物があります。芸術の館Palais des Artsです。これに付属する庭園に複製オリジナル(実際にエストランジャン噴水に設置されていたもの)があります。敷地の外、道路からも見えますよ。

「不滅の精霊」は左手に消え入りそうな松明を持ち、右手ではペストを乗り越えるのに貢献したマルセイユ市民を讃えるべく冠を差し出しています。柱には主だった貢献者の名が刻まれています。

ちなみに1835年にエストランジャン噴水上部は、現在見られるようなマルセイユ女神像と商業の精霊の像に置き換わりました。エストランジャン噴水は数あるマルセイユの美しい噴水の3番目として別記事で紹介しています(「マルセイユで最も美しい噴水3選」)。

その他、マルセイユらしい光景の絵画

アルフォンス・ムット作「小麦の搬出」

マルセイユ の陽光と光景を写しとった絵画が多く、ルーブルやオルセーとは違った美術館を楽しめると思います。

住所:Palais Longchamp 13004 Marseille。アクセス:トラム2番線でLongchamp下車、目の前。開館時間:9時30分〜18時。月曜・祝日は閉館。入館料:大人6ユーロ、小人3ユーロ。シティパス提示で無料。

タビリオ
メトロ1番線の「サンク・アヴニュー・ロンシャン Cinq-Avenues-Longchamp」からアクセスも可能ですが、裏手から階段を登って庭園を横切る必要があるので、あまりお勧めはできません。トラム2番線で行くと良いですよ。


ヨーロッパ・地中海文明博物館 MuCem

近代的構造のMuCem

2013年マルセイユが欧州文化首都に選定された折りに建設されました。フランス人には知名度は高く、今度マルセイユに行くときはミュセムを見学しようと思う人が多いです。

旧港から歩いて行ってサン・ジャン要塞に入ってからアクセスするのが一般的です。要塞の敷地内が見れますね。

ここは展覧会場といった方がいいのか、いくつかの展示スペースがあって、その時々の展示が何ヶ月か単位で入れ替わる仕組みになっているようです。入館料を支払えば現在公開されているすべての展示を見ることができます。

僕がいった時は、有史以前から地中海周辺地域に広まった農業・牧畜といった田舎をテーマにしたもの、それとヨーロッパの都市相互の影響をテーマにしたもの、この2つの常設展Expositions permanentesと、定期的にテーマが変わる仮設展Expositions temporairesに分かれていたのですが、現在は仮設展のみになっているかもしれません。

仮設展は、マルセイユ出身で成功を収めた芸術家や産業人に関するものですからあまり日本人には興味が沸かないかもしれません。

この他に、マルセイユの街の発展段階を説明した映像が流されているいくつかの小部屋もありましたが、現在公開されているかどうかは不明。フランス語ですが、地図や映像等で、段階的に発展を遂げたこの街の歴史を大体把握することができたのですが。

MuCemについては別記事で詳しくご紹介しているので、そちらも参考にして頂けたらと思います(「マルセイユ観光2〜MUCEMとサン・ジャン要塞」)。

以前は常設展で、興味深い切り口からマルセイユの歴史を解説したものがあったので個人的にイチオシだったのですが、現在はあまり展示自体 日本人には面白味がないかな、ということでこの記事では順位を下げることにしました。

ただサン・ジャン要塞の内部、そして展示館の屋上までは無料で行けるし、そこにある心地よいカフェやレストランで食事したり、また展示館のモダンな建造物も見ることができるので、行く価値は充分にあると思います。パリのルーブル宮にモダンなガラス張りのピラミッドを建築したように、マルセイユでは石造のサンジャン要塞に近代的建物を併設してしまう、フランス人の美的感覚には驚かされてしまいます。

展示館の屋上からエスカレーターで地階に降りた所に入場券売り場がありますが、そのまま見学せずに外に出ても良いですね。

住所:7 promenade Robert Laffont 13002 Marseille。アクセス:ヴィユ・ポールのベルジェ埠頭から徒歩10分、途中右手にマルセイユ市庁舎が見えます。入館料:大人11ユーロ。シティパス提示で無料。 家族券18ユーロもあり(大人2人+小人5人まで)。22年5月現在

タビリオ
ここの屋上にはモール・パセダLe Môle Passedatというモダンで洒落たレストランがあります。午前中に博物館を見学してからここで昼食もしくは夕食、という風に予定を建てるのも良いですね。
Le Môle Passera – La Table

MuCemのレストラン Le Môle Passedatは、窓際の景色の良い高級な方(La Table)と、入り口に近いセルフ方式のリーズナブルな方(La Cuisine)の2つありますが、前者がお勧め(夕食ならブイヤベースもあります)。

前菜、主菜、デザートで昼食(12−14:30)は55€、夕食(19:30-22:30)は75€です。小食ならアラカルトで主菜とグラスワインを注文しても良いかもしれません。

タビリオ
MUCEMの外、要塞の敷地内にも同系列で同名のカフェがあります。こちらの方は食事よりもカフェやアペリティフで一服するのに向いているかも。


あとがき

如何でしたか? 2つの博物館MHMとMuCem、美術館を1つ紹介しました。天気の良くない日、陽を浴びすぎたから今日は屋内での活動にしたいなと思うような時のため、参考になれば幸いです。

マルセイユでの滞在先はお決まりですか?マルセイユを徹底的に観光するなら旧港(ヴィユ・ポール)周辺、マルセイユを拠点にエクサンプロバンスやアルル、ニームへの日帰り旅行を予定しているならサンシャルル駅周辺が便利です。



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