【マルセイユ観光】MUCEMとサン・ジャン要塞

地中海を囲む一帯にはワインとオリーブ油といった共通性があり、ヨーロッパ世界の中心がより北の内陸に移った時代には、アラブ世界との対立が十字軍遠征という事象に顕著に見られます。ヨーロッパ・地中海文明博物館、通称MUCEMは、この文明の移り変わりに一貫して関わってきたマルセイユ という都市を解き明かす博物館です。

海に向かって開かれた場所に建てられています。建築家ルディ・リチョッティによる設計。地中海文明を扱った初の国立博物館で2013年6月マルセイユにオープンしました。

サン・ジャン要塞の中からMucemにアクセスできる

1. サン・ジャン要塞からアクセス

旧港北側の遊歩道を進んだ突き当たりにサン・ジャン要塞があり、門から中に入ることができます。警備員による簡単な荷物検査を済ませれば自由に(無料で)要塞の中に入れます。ここからMUCEMにアクセスすることになります。

入ってすぐ切符売り場billetterieがありますが、MUCEMに入ってからでも購入できるのでここは通り過ぎてOKです。

ヨーロッパ・地中海文明博物館MUCEMはガラス張りの立方体という近代的な建物で、要塞の裏手にあります。

2. MUCEM

要塞内部から橋を渡ってMUCEM屋上のテラスへ。海の見えるオープンエアの心地よいテラスでしばし休憩。直射日光を木漏れ日のように和らげてくれる覆いの下、長椅子で寝そべるのも良いし、カフェで冷たい飲み物を注文するのも良いですね。

そこから建物内部に入ってエスカレータで展示場のある階に降りて行きます。切符はこの階の受付Accueilで購入できます。

入館料は9.5€で、常設展示場2箇所と臨時展示場や要塞の成り立ちについての展示場全てにアクセスすることができます。CITY PASSがあれば無料で入れます。

3. 入館料と開館時間

料金区分料金(€)備考
一般料金9.5026歳以上。
割引料金518-25歳。
無料018歳未満。シティパス提示。毎月最初の日曜日。
家族券141枚の券で大人2名+子供1〜5名が入館できる。最低子供1人同伴が条件。
(2019年現在)


開館時間は以下の通りです。

時期 開館時間
11月5日 – 4月30日 11 – 18h
5月2日 – 7月6日 11 – 19h
7月7日 – 9月2日 10 – 20h
9月3日 – 11月4日 11 – 19h

毎週火曜は定休日で、5月1日、12月25日も休館日になります。

4. 常設展と特別展

チケット1枚で常設展 Expositions permanendtesと特別展 Expositions temporairesすべてを見学することができます。

特別展はマルセイユ生まれの著名人をテーマにしたものが多く、日本人にはあまり馴染みがないのであまり面白くないかも。

地中海周辺の都市に関する2つの常設展を見学するのが良いと思います。


常設展1:農業・牧畜

1つ目は農業・牧畜といった田舎がテーマです。アフリカ北部やヨーロッパで1万年に渡り狩猟・漁労、農業・牧畜がどのように行われていたのか、オリーブオイルやワインがどのように生成されてきたか等、道具の展示と共に説明されています。

入ってすぐのスペースで英語とフランス語によるビデオが上映されているのでまず全部見ることをお勧めします。15分くらいの映像が繰り返し上映されているので、途中から見ても大丈夫です。続く部屋ではこの内容に沿った形で展示物が並べられています。


常設展2:都市

2つ目は都市がテーマです。地中海を囲む各都市の「接続性」という見地からこの区域の文明を読み解くという趣旨になっています。入り口のパネルではフランス語と英語のみの説明になっているので、下に日本語訳を記載しておきますね。

接続可能性Connectivitésと「接続性Connexités」

2008年より都市比率は50%を超え、2050年には地球上の65%以上の人々が都市部に住むことになると予想されている。こうした都市集中化は地中海の国々にも見られる。

地中海の各都市は地理的な接続可能性を辿り、16〜17世紀と20〜21世紀という2つの時代に渡り、相互に接続しつつ発展してきた。

本展示場の入り口では、批評家および歴史家フェルナン・ブローデルの思想を受け継ぐ弟子を含む7人による証言を聞くことができる。20〜21世紀の都市を読み解く鍵が得られるだろう。

次に、2つの順路が用意されている。

→コンスタンチノープル(現イスタンブール)に始まりリスボンに至る16世紀の地中海世界。海を基本的な舞台として、一方ではイスタンブール、ヴェネチア、アルジェを擁するオスマン・トルコ帝国、もう一方ではジェノバ、セヴィリア、リスボンを支配したハプスブルク帝国が発展、その間でこれら6つの都市がそれぞれの役割を果たした。

→イスタンブール、カイロ、カサブランカ、マルセイユという4つの大都市の間に対話が生まれることになる21世紀の地中海世界

よりよく理解するためには基本となる地理と地図に立ち戻っても良いかもしれない。また現代芸術家の視点もこれらの都市の現実を理解する助けになるだろう。

この2つの順路の交差地点こそ、実証と創作の間、短い歴史観と長い歴史観の間で、歴史と記憶が合わさる緩衝地帯になっているのである。

海上から入り、海底から出ていく。海洋の道にはもう1つ海底の道が加わった。ケーブルによるネットワークが張り巡らされ、今や最も貴重なものになった商品を運んでいる。そう、電子データのことである。

フェルナン・ブローデルにとって貴重な概念である、「長期間」と「現在」が相互に関連している。見学者は2つの順路を通りながらも、同じ海を二度渡ることはない。

この内容に沿って各時代、各都市の展示物を追うように構成されています。

2つの常設展は「農業・牧畜ー都市という対比」により地中海世界での文化の伝播が説明され、2つ目の常設展は「過去(アラブ世界との対立)ー現在(共存)という対比」から地中海を取り巻く文明の発展が把握される、といった構成になっているのかと思います。

ともするとバルセロナやナポリといった西欧の都市と並置されがちなマルセイユ ですが、見学し終わった後はイスタンブールやカイロ、カサブランカといったアラブ世界と並ぶ地中海の1都市に見えてきます。

5. サン・ジャン要塞 Fort Saint-Jean

MUCEM見学後はゆっくりとサン・ジャン要塞の内部を見てから、ヴィユ・ポールに戻るのが良いと思います。

サン・ジャンSaint Jeanつまり聖ヨハネのことですが、これは12世紀の聖ヨハネ騎士団に由来します。

テンプル騎士団・ドイツ騎士団と並んで三大騎士団を構成し、12〜13世紀にかけ活躍しました。エルサレムでの拠点を失い本拠地を移すに従ってロードス騎士団およびマルタ騎士団と呼ばれるようになりました。

12世紀末に聖ヨハネ騎士団はマルセイユのこの場所に1拠点を築き、聖地エルサレムに兵士を送り出す出発点としました。コマンドリーと呼ばれる修道院所有地には礼拝堂、教会、病院、司令官の邸宅がありました。全体が完成したのは1365年です。

四角い塔と丸い塔が見えると思います。四角い塔は、港をより効率よく守備できるようルネ王の命により1447年から1453年にかけて建てられました。丸い方、ファナル塔 Tour Fanal の方は20km沖合からでも商業船から認識できるよう17世紀半ばに建てられました。

現在見られるような「要塞」になったのは、ルイ14世の時代、1668年から1671年にかけてです。この頃には十字軍の役割が薄れ聖ヨハネ騎士団はこの地を立ち退くことになりました。


マルセイユでの滞在先はお決まりですか?マルセイユを徹底的に観光するなら旧港(ヴィユ・ポール)周辺、マルセイユを拠点にエクサンプロバンスやアルル、ニームへの日帰り旅行を予定しているならサンシャルル駅周辺が便利です。



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