南イタリアのヴィエステ 〜ボートツアーで海の洞窟巡り

欧州で観光シーズンの始まる5月、南イタリアに2週間の旅行に出かけました。

独学でイタリア語を勉強していて、イタリア人の生のチャットからよく使う表現や考え方などを学ぶため、イタリア人同士でチャットしているフォーラムを覗いたりしていました。ある日このフォーラムで、サルデーニャは快適だよねとか南イタリアのxxxがお勧めとか会話が弾んでいて、ヴィエステという地名が出てきました。

ちょうど南イタリア旅行の準備中だったので、ヴィエステってどんな所かなとユーチューブ等で探してみたら、素晴らしい海の広がる映像がたくさんアップされているじゃないですか。ここは是非行ってみたい、ということで旅行に組み入れた次第です。

ヴィエステってどこ?

ヴィエステという街は南イタリアの東側(アドリア海側)、突き出た半島の先頭にあります。南東部(ブーツのかかと部分)の細長いプーリア州の内 北の部分にガルガノという自然豊かな地方があり、その中にある小洒落た街がヴィエステです。プーリア地方はレッチェやアルベロベッロがある州として有名ですね。

コルシカ南部と同じ位の緯度ですから5月、9月でも暖かく直射日光下では暑いくらいです。こういう気候だとテラスでの夕食が本当に気持ち良いですね。

ヴィエステってどんな所?

日本ではほとんど知られていませんね。というかイタリア人でも知らない人がほとんど。イタリア人はサルデーニャや南イタリアで過ごす家族が多いですが、イタリア人でも知らない人は多いようです。

グーグルマップ等で少し拡大して見てみると分かると思いますが、ほとんど緑に覆われています。それもその筈ヴィエステの手前まで国立公園(ガルガノ国立公園)になっていて自然が保護されているからです。車で行くとトンネルをいくつも通ってヴィエステに到着します。山の裏側に当たる訳ですね。

この山は禿山Monte Calvoといい、ほぼ石灰岩でできており標高1055メートルです。侵食しやすいため洞窟が自然にでき、先史時代から人が住み着いていました。

国立公園は1991年の政令により制定、約12万ヘクタールの広さでイタリアでも有数の規模を誇っています。2200種もの植物、鷹やフクロウを含む170種の鳥が生息しています。

ガルガノ地方の歴史

この地方には旧石器時代から人が居住していたことが分かっています。新石器時代、紀元前60世紀初期以降になると居住者はかなり増えたようです。ペスキチやヴィエステ、マッティナータといった場所で遺物が見つかっています。

長らく漁業、農業が主要産業でしたが、近年はバカンス滞在地として賑わいを見せています。

この地方には聖人の名を冠した地名が多く見られ(聖アンジェロ山Monte Sant’Angeloなど)、中世より修道僧が往来していたことを物語っています。特に5世紀末、聖アンジェロ山に大天使ミカエルが出現したと伝えられてからは中世を通じて巡礼者が絶えませんでした。この聖地に残された落書きにはアングロ・サクソン語やゲルマン語が見られ、かなり広範囲から巡礼者が訪れていたことを物語っています。

ピッツォムンノのモノリスと伝説

ピットムンノのモノリス

ヴィエステに来て最初に感銘を受けるのが青空に映える白い岩壁ではないでしょうか。そしてその前に聳える白いモノリス。ピッツォムンノという名の岩です。この一帯はビーチになっており、「城砦ビーチSpiaggia dello castello」の名称の他に「ピッツォムンノ・ビーチSpiaggia di Pizzomunno」と呼ばれることもあります。

ピッツォムンノはこの地方に伝わる伝説に出てくる漁師の青年の名です。

ヴィエステがまだ小さい漁村だった頃のこと。誠実で、優れた美貌と体格の持ち主である若者ピッツォムンノは、海の色の目、太陽のように輝かしい髪と共に類まれな美貌の持つ乙女クリスタルダと相思相愛の関係にありました。毎日小舟に乗って漁に出ると、この青年に魅了された人魚たちが歌を歌います。それだけでなく、自分達の愛人として王になってくれたら不死の身にしてあげると幾度も提案しました。何度誘っても断られたことに腹を立てた人魚たちはクリスタルダを海の底に引き摺り込んでしまいました。悲しみの苦痛からピッツォムンノの心と体は石化してしまいました。100年に1度クリスタルダは海の底から戻ってくることができ、一晩だけ再会することができます…。

という訳で、この海岸に立ち待ち続けている訳ですね。永遠の愛の象徴とも言えるこのビーチで泳ぐのはきっと縁起が良いことでしょう。

マックス・ガッツェMax Gazzéというイタリアの歌手がこのクリスタルダとピッツォムンノの伝説を歌にし、2018年のサンレモ音楽祭で歌ったことからイタリアでも知名度が上がりました。高らかに歌われる「100年であろうと君を待ち続けるよ!」とのメッセージに感銘を受けた観客も多かった筈。YouTubeで視聴できます。

ヴィエステの見所は?

街に隣接したビーチカフェやレストランで1日を過ごす、レンタカーで周辺の町をドライブするスタイルがここでの一般的なバカンスの過ごし方になります。そして何よりも目玉となるのがモーターボートでの海の洞窟めぐりです。

ペスキチ漁村のトラブッコ

車で周辺を訪れることができる場合はペスキチPeschiciという漁村に行ってみるのをお勧めします(ヴィエステから30分位。タクシーだと片道35−40€ほどかかってしまう)。ここでは昔からの伝統的な漁業の方法であるトラブッコTrabuccoという器具を近くから見ることができます。トラブッコとは網をロープと木にくくりつけ海に向かって設置したもので、水面下に沈めておき魚が集まった所で一気に引き上げる仕組みです。

海岸沿いにいくつかあるのですが、ペスキチのはトラブッコとともにカフェがあり、海を見ながら飲み物や食事を取ることができます。気取った感じはなく さり気ないオープンエアのスペースです。

ヴィエステの海の洞窟めぐり

ヴィエステの街自体 石灰岩の崖の上にできており、この半島一帯 石灰岩が海に浸かっています。浸食しやすいので海の洞窟が現在進行形でいくつもできています。ヴィエステの港から洞窟めぐりのボートが出ているので、着いたら港のブースで翌朝のボートツアーを予約しておくと良いでしょう。

季節によって朝と昼、加えて午後発がありますが、朝一番がお勧め。なぜなら洞窟のある崖は東に向かって岩肌を見せており、午前中の太陽は真っ白な石灰岩の崖を照らし、水面にも反射し実に美しいからです。それに5月に参加したのですが、既に陽射しは強く風が涼しく感じるくらい快適です。

15箇所ほど色んな大きさ・形の洞窟を回ります。陥没したものや、奥がまるで砂浜のビーチになったもの、2つの洞窟が奥で繋がったもの等、飽きることがありません。また朝であれば一旦水面下に入った陽光が反射光により水面上の岸壁を照らし、白い壁面がうっすらと青に染まる幻想的な光景も見られますよ。

中でも見落とせないのが聖フェリーチェのアーチ。侵食により丸い穴ができアーチのような石灰岩が海から出ています。その穴の中央に遠方の丘の上に立つ聖フェリーチェ教会が見えることから、聖フェリーチェのアーチArco di san Felice という名称が付いています。「見える」と言ってもそのアングルでボートが通る時点での見える訳ですからある程度待ち構えておいた方が良いですね。ちなみにこの記事のサムネ画像はその時に撮った写真です。

ほんの一端ですがYouTubeでどんな感じか見ることができるので下にリンクを貼っておきますね。陽光や風の心地よさを感じるには実際に体験してみるのが良いのですが。

港の入り口のブースでチケットを購入することができます。20ユーロで2−3時間たっぷり楽しむことができます。ボート乗り場はそのブースから更に進んだ突き当たりになるかと思います。

あとがき

5月だったのでビーチで過ごすよりも、ボートでの海上洞窟ツアーの他は、街中を散策したり、周辺をドライブして過ごしました。5月の南イタリア、快適ですよね。

行き方としてはレンタカーかバスになると思います。バーリBariからバスがでており、片道30€で乗り換え1回、接続が良ければ2時間半で行けます。ただし最初のバスは1週間に1度の運行、2つ目のバスは1日に3本しか運行していないので、出発前にしっかりと運行日時を確認して計画を立てる必要があるかと思います。

このような制約があるので南イタリアの旅行ではレンタカーを借りるのが一番です。ペスキチなど周辺の街を訪れることもできます。レッチェやアルベロベッロ、ガリポリなどプーリア地方全体を周遊することもできますね。