フランス式ノマド生活

会社の人間関係に煩わされず、時間・スペースも会社に制約されることのない仕事のスタイル、ノマド…。好きな時間に好きな場所で仕事をする、場合によっては旅をしながら仕事をする、その旅先も日本に限らず海外でもありうる、と考えるだけで陶酔させられてしまいます。

この記事を読んでいる方に改めて「ノマド」とか「コワーキング」等の解説は不要でしょう。本題に入りたいと思います。フランスでのノマド生活がどんなものかを一緒にチェックしてみましょう。

1. スターバックスでMacBook広げて作業

これは日本と一緒。

日本では「ノマド」で検索すると検索キーワードに「ノマド うざい」が上がってくる程、現実のノマド民は側から見て煙たがられているようです。スターバックスでMacBookで仕事してるワタシかっこいい、と自分で思い込んでいるんじゃないの?とかドヤ顔で仕事している(フリをしている)のがうざい、と思っている人が多いようです。これは日本での話。

フランスでもスターバックスで作業するノマドは多いです。午後2時くらいからはこうした人たちで満席になってしまう程。フランスと言えばカフェ文化、どこのカフェでも良さそうなものですが。でもやはり普通のカフェでは作業できない理由があるんですね。

フランスのカフェでは、コーヒー1杯で店内にいられるのは1時間、という暗黙の了解があります。コーヒー1杯2.20€として、スターバックスではグランデ・サイズで5.5€くらいですから、2.5時間くらいはいる権利がある、と思って良いです。

普通のカフェだと電源はないし、1時間単位で飲み物を注文しなければならないし、何よりコーヒー何杯かだけで何時間も居座ることで店側から嫌がられるのでは、という心配もあります。小さいカフェだと個人経営の所が多いですからね。大きいカフェだと観光客や食事のために来る人が多いので、パソコンを広げて作業するのは雰囲気にそぐわないというか違和感があります。

この点スターバックスなら全部クリアです。最後の居心地の点をとっても、店内には従業員しかおらず時間を気にする必要はありません。そして2階席のある店なら尚更人気です。

またカフェなので、普通に友人同士で来ておしゃべりする人も多いです。ということは2人以上のグループで作業することもできる訳です。音楽も普通にかかっていますし。混んでいる時も4分の3以上は1人で黙々と作業している感じですが。

フランスのスタバでパソコンやスマホをWi-Fiに接続する方法。
1. Wi-Fi接続設定でStarbucksを選択
2. ポップアップ画面で現れる利用規約に同意する
3. ブラウザを開いてインターネット利用を開始(ポップアップ画面は開いたままにする。画面の隅にでも移動させておけば良い)

朝10時30分ごろ、かなり空いている(キャパシティの4分の1程の客数)時間帯で接続速度を確認した所、以下のような結果でした。ダウンロードで10.37Mbpsですからかなり良いです。

スタバにはWifi環境がある筈ですが、繋がらないこともよくあります。でも文句を言わず作業できているのは、携帯電話でテザリングしてパソコンをインターネットに接続しているからです。この国では安い携帯電話料金で大容量データ通信できるプランに加入できます(月10€(=約1400円)で60GB利用など)。これで支障なくWi-Fiのない環境でも作業できるんですね。

1日2−3時間作業するノマドにはここが一番費用対効果が高いです。平日毎日利用するとして週30€程、月150€程ということになります。

スタバ利用のメリットを整理すると次のような感じでしょうか。
1. 長居できる(飲み物代に6€ほど出費)
2. 電源のある席が多い(壁際及び窓際)
3. 良好なWi-Fi環境
4. 1人で黙々と作業することもできるし、2人以上のグループで作業することもできる。

デメリットとしては最近フリーランス、ノマド・ワーカーが増えてきて午後になると満席になってしまう所があることでしょうか。電源のない席、ソファとローテーブル(寛ぐには最適ですが)のような席しか空いてなかったりします。

2. コワーキングスペースの普及

これだけノマドで作業する人が増えてくると、パリ中心地では満席のことが多く、良い席がないことも頻繁になります。

先述の通り一般客にとっては席を長時間独占するノマドに対してあまり良く感じていない人が多いですし、ノマド自身にとっても、自分が作業する場所もない程混み合っている…。そうした訳でコワーキングスペースの需要が高まり、現在フランスの都市部ではかなり普及しています。

こちらは少し経済力が必要になってきます。飲み物は飲み放題ですが、1時間6€くらいが相場になるので。2.5〜3時間ほどの利用だとスターバックスで6€(1杯の値段)、コワーキングスペースだと18€になります(コーヒー等のドリンクは飲み放題、焼き菓子類が無料になる所もあり)。Wi-Fi環境は整っているし、何よりフリーランスで頑張っている人たちだけが集まっている、ともすればふとした会話がきっかけで新たなビジネスを立ち上げることができる可能性もある訳です。

時間単位、半日単位、1日単位でスペースを借りることができます。各コワーキングスペース運営会社と直接契約し、入会金が必要なコワーキング・スペースがあるのは日本と同じです。フランスではこれに加え、利用者とスペース提供者を繋ぐ役割を果たす業者/サイトがあり(例えばNeo-Nomade.com)、入会金が不必要なばかりか(メールアドレスを指定してパスワードを自分で設定するだけ)、利用時間をサイトやアプリで予約できるというように、かなり利便性が高いです。

22年9月現在、Neo-Nomadeの提携先はパリで323、リヨン88、マルセイユ31ほどあります。コワーキングスペース、かなり普及していますね。もちろん、Neo-Nomadeに登録するだけで提携先には利用料金を払うだけでどこでも利用可能です。

利用料の相場としては、1時間6€、半日15〜22€といった所でしょうか。1時間だけ利用するというのはあまり考えにくく、時間単位の場合2ー3時間の利用が多いと思われます。半日(4時間)では少し長いといった場合ですね。1日(7−8時間)というのもありです。

数人で利用できる小オフィスもありますし、グループとして日常的に事業を始めている場合は3−5人ほどの小オフィスを構えることもできます。会社の住所登録を行うことができる所もあります。

自宅や図書館以外で作業する場合、まずはスターバックス、経済的余裕が出てきたらコワーキングのオープン・スペース、そして複数人での共同作業を行うならコワーキングの小オフィス、そして事業が軌道に乗ったらオフィスを借りて、という具合に進展していくイメージです。

フランス人ノマド

ノマド(原義:遊牧民)だからと言って定住地を持たずに仕事をするという訳ではなく、いつも同じ仕事場、人間関係に縛られないという意味でのノマドですよね。つまり普通に自宅に住んで、同じ街のスタバやコワーキングスペースを時々利用する、というのが一般的なスタイルです。日本もそうですよね。

フランス人にとってのノマド生活を見てみましょう。

フランスは定額制のサービスが多く、一定の費用で快適な暮らしができます。

公共交通機関の交通費は定額制で$、加入期間メトロもバスも乗り放題になります。パリであれば 1週間22.80€(月曜〜日曜)、1ヶ月75.20€(月初〜月末)ですし、マルセイユなら72時間パス10.80€、1ヶ月73€(月初〜月末)、年間480€です。(22年9月現在)

ジムは1ヶ月100€程するClubMedもあれば、月35€程のKeepCoolもあります。KeepCoolはフランス国内各地にあり、加入すればどこでも使えます。ClubMedも同施設ならどこでも使えますが、大都市に限られますね。

映画も定額制で、月額20€程で、加入した映画館の映画が見放題になります。パリ周辺で展開するUGCグループと、パリを含むフランス各地に存在するPathé Gaumontがあります。

食費はスーパーで食材を買って自炊すれば安めに抑えられます。昼食ならサンドウィッチと飲み物で済む国民です(日本人はラーメンやご飯系など温かいものを食べないと食べた気がしない人が多いようですが)。

後は家賃ですね。パリ市内はやはり高いです。あまり治安の良くない18〜19区でも26㎡前後で月900€くらいします。6−7区、15〜17区(西側)は高級住宅地とされますが交通の便はあまり良くないように感じます。1−5区、11〜12区あたりだと月1100€ほどしますが住み心地の良い立地です。

マルセイユは中心部(トラムが走っているあたり)を外れると途端に治安が悪くなるので、やはり中心部が狙い目です。1区だと40㎡ で650€くらいの相場です。海岸線に近い7区はシックなイメージですが家賃は上記とさほど変わりません。交通の便はあまり良くないです。カステラーヌ広場周辺の5−6区なら治安は良く交通の便もすこぶる良いです(メトロ、トラム、バス)。このあたりでも40㎡ で650€くらいの相場感です。

要約すると、マルセイユのそこそこ良い地域で40㎡家具付きのアパルトマンに住んで、交通機関の月間パスを購入、スタバには週5回行き、ジムや映画館にも加入し、ある程度節約しながら、1130€(=650+75+150+35+20+200)ほど掛かることになります。その他電気代や保険代、携帯電話代といった経費もかかりますが、月1300€ほど稼ぐ必要がある訳ですね(もちろん親元に住んでいたり、パートナーが住居費用を出してくれる場合、必要経費はかなり減りますが)。

日本人がフランスでノマドする

多くの外国人を引き寄せるフランス、ここに居を構えて仕事するフリーランス、ノマド・ワーカーも多いです。

上に見てきた通り、ネックとなるのは家賃ですね。これをいかに低く抑えられるか。Airbnbのような民泊システムを使うのが良いでしょう。電気代も保険料も込みで利便性が高く、名の知れた業者なので信用も置けます。

1ヶ月単位で借りるとかなり安くなることは知っておくべきです。2週間分の値段で1ヶ月滞在できることもあります。

カップルで共働きなら1つのアパルトマンを折半することが可能ですね。Airbnbで「まるまる貸切」でフィルターをかけて探します。パリ中心地で月2000€が相場でしょうか。

郊外だと半額くらいになります。ゾーン5まではメトロのパスで自由に行き来できるので、イメージを気にしなければありですね。これなら1人500€くらいに収められそうです。

1人で滞在する場合は他人とのシェアが良いかもしれません。Airbnbのフィルターで「シェアルーム」を指定することになります。パリだと月850€位で見つかります。ユースホステルのドミトリーのような感じです。

ホスト宅の一室を貸してもらう場合(Airbnbで「個室」を選択)、月間割引でも2500€くらいしてしまいます。ホストに気兼ねしながら滞在し、多額の賃料を払うくらいならドミトリーの方が良いように思いますが…。

地方都市マルセイユだと比較的安くなります。月間で借りるとしてワンルームで800-1000€。シェアルームはめぼしいものはありませんでした。ワンルームを借りてしまうのが良いです。

通信費(Sim代)も考慮する必要がありますね。宿にWi-fiがあればそれで充分だったりしますが。

あとがき

いかがでしたか。

宿代を節約できる地方都市なら敷居がぐっと低くなりそうですね。マルセイユに滞在すると仮定して試算すると…
800 Airbnb
75 交通費(月間パス)
150 スタバ・ドリンク代(平日毎日)
35 ジム
20 映画
200 食費
合計1280€位になりますね。

勿論これに往復の飛行機代を追加しなければなりません。ビザなしで滞在できるのは3ヶ月までなので往復ともに航空券を購入することになるかと。

この位の費用でフランスでノマド生活が送れる、というイメージで記事を書いたのですが、結構費用がかかりますね。欧州在住でフランスへの移動費が抑えられるとか、宿代を何かしらの方法で抑える(例えば日本の自宅とフランスの自宅を3ヶ月限定で交換する等?)ことができれば、可能かもしれません。