パリから1泊2日リール旅行、観光スポット厳選10箇所

パリ、リヨン、マルセイユに次いでフランス第4の都市リール。TGVでパリから1時間なので日帰りも可能ですが、歴史的に独自の発達を遂げ、フランスの他都市とは異なったこの街を2日かけて周る価値は充分にあります。

観光スポット20選を紹介した記事もありますが、観光は8箇所位に絞り、その他はお茶したり(メールMeertという老舗の喫茶店あり)、食事(肉をゼラチンで固めたポチェヴレーシュPotjevleesheやウェルシュWelshという郷土料理あり)を楽しんだりした方が良いと思うんです。

そこで、独断と偏見で厳選したリール観光スポット(&アクティヴィティ)10箇所をシェアしたいと思います。

1. グラン・プラス Grand Place

フランドル駅から徒歩7分、街の中心部に当たるグラン・プラスGrand Place、直訳すると「大広場」。ベルギー、オランダ、フランス北部に特有の街づくりのスタイルです。最も有名なのはベルギーのブリュッセルとフランスのリールです。

戦後、フランス解放に多大な貢献をしたシャルル・ド・ゴール将軍を讃えて、ド・ゴール将軍広場Place du Général-de-Gaulleと改称されましたが、地元では変わらずグラン・プラス、または女神の広場Place de la Déesse (1845年に女神像の柱 Colonne de la Déesseが建てられた*)と呼ばれています。

* フランス革命戦争中の1792年、ハプスブルク軍に街を包囲された折りに、リール市民が街を守り抜いた勇敢さを讃えて女神像が設置された。

パリ郊外の国際空港にもその名が冠されているシャルル・ド・ゴール将軍はこの街リールの出身でもあります(後述)。

17世紀に、石とレンガを組み合わせた建築様式が確立し、街のいろんな場所でこのような建物を見ることができます。レンガ色が組み合わさることで、石だけの建物に比べて華やかな感じになりますね。

ここにはテラスのあるブラッセリーがいくつかあります。暖かい気候であれば、昼食、あるいはフライドポテトをつまみにビールをアペリティフ(夕食前の一杯)として頂くと良いかも。

この広場から旧市街に行けるのですが、周囲にいくつか見ておくべきスポットがあるので、まずそちらから周りましょう。

2. 旧証券市場 Vieille Bourse

旧証券取引所正面(グラン・プラスに面している)
旧証券取引所の中庭

1653年建造。グラン・プラスに面しており、先述した、1階は石、2階より上はレンガと石を組み合わせたフランドル様式の建築です。華やかでありながら重厚、とても美しいです。

1921年に歴史建造物に指定されました。フランドル地方(ベルギー、オランダ、北フランス)の経済活動が盛んだった17世紀、リール周辺の経済活動の表舞台となった所です。

建物の正面から中庭に入ることができます(無料)。古本屋がお店を出していると思います。中庭を通り抜けるとテアトル広場に出ます。

3. テアトル広場 Place du théâtre

旧証券取引所を通り抜けるとオペラ座の正面に出ます。テアトル広場を挟んだ向かいですね(テアトルは「劇場」の意)。

そもそもこの広場の上には18世紀(1787)に建造された大劇場Grand Théatreがありました。1903年に火事により消失してしまったのですが、フランドル駅からグラン・プラスを繋ぐスペースが必要と考え小さい広場が設けられました。それがテアトル広場(別名 プティット・プラス=小広場)というわけです。

3.1. リール・オペラ座 Opéra de Lille

新古典様式のオペラ座

この広場に面してオペラ座を建造することが計画され、1907年リール市によるコンペに見事優勝したのは建築家ルイ=マリ・コルドニエ氏Louis-Marie Cordonnierです。小振りではあるけれどパリのオペラ座の要素を所々に取り入れた新古典様式の建物です。どうせならフランドル様式の旧証券取引所とネオ・フランドル様式の商工会議所に合わせ、この地方の様式に合わせて建造すれば広場としての統一感がありそうなものと思いますが、全会一致でこの新古典様式の案が採用されたということです…。

完成を見るのは1914年、第一次世界大戦が始まってからです。リールを占領すると、ドイツは照明等 劇場に改装を加えました。4年間のドイツ占領時代に100回ほど公演が行われたようです。

第二次世界大戦時は1940年にドイツに撤収され、ドイツ人芸術家によるドイツ人聴衆のための公演が行われました。1944年連合軍により解放されてから劇場はリール市に返還されました。

美しく調和が取れ、見ていて落ち着きますね。興味ある催し物があれば是非中に入って見てみたい所ですが、僕が言ったのは舞台芸術オフシーズンの夏…。また来た時の楽しみにとっておくことにします。

3-2. 商工会議所 Chambre de Commerce

リール商工会議所

さて小さい道を挟んだ隣に鐘楼を備えた美しい建物があります。レンガを組み込んだリールらしい建物です。これが商工会議所で、20世紀になり、古い証券取引所ではスペースが足りないということで建造されました。

実はこれもリール市によるコンペで同時期にルイ=マリ・コルドニエ氏が優勝し、1910年着工、1921年に完成を見ます。先述したように様式はネオ・フランドル様式歴史建造物に指定されています。

鐘楼(時計台)は市民権が増大したことのシンボルですね。昔は教会が鐘で人々に時間を知らせていたものです。リール市内にはもう1つ、内部に入って上まで登るとリール市を一望できる市庁舎に付属する鐘楼があります(観光スポットの1つ)が、これとは別物です。

商工会議所はフランスの各都市に存在し、その地域の経済活動を支える、現役の重要な機関となっています。

4. ノートルダム・ド・ラ・トレイユ大聖堂

石畳になっている部分が旧市街Vieux-Lilleです。歩き回っているとノートルダム・ド・ラ・トレイユ大聖堂 Cathédrale Notre-Dame de la Treille に辿り着くと思います。大聖堂のイメージとは異なりかなりモダンな感じがします。

建造開始は1856年ですが、完成はファサードが設置された1999年です。ほぼ150年かけて建造された訳でその間何度か建築家が入れ替わりました。基本的にはネオ・ゴシック様式です。

このファサード、実に不思議な石でできていて、内側に入ると太陽光が見事にオレンジ色の光となって内部に浸透するのです。不思議な雰囲気です。それに下部には彫刻の施された黒色の扉が取り付けられているのですが、これも内部から見ると光が透けて見えます。これは写真では味わえない美しさなので、是非中に入って体験すると良いと思います。僕は西陽があたる午後、16時頃に行ってこのような雰囲気を味わうことができたので、午後に行くと良いかもしれません。

ノートルダムとは我らの母、すなわちマリア様のことを指しますね。トレイユTreilleというのは、ここに設置されたマリア像に周囲が格子状treillisになった柱の土台が着いていたことに由来すると言われています。

木彫り格子を土台に持つマリア像(出典Wikipedia)

この像、中世から霊験あらたかだったようで、13世紀にはマリア様の取りなしにより病気が治癒したとか、16世紀には不治の病、盲目やヘルニア、麻痺が治癒した等の奇跡が起こったとのことです。

ルイ14世自身、フランドル地方を制圧した折り、このマリア像の前でリールの自由を尊重すると宣誓したそうです。

5. エスタミネでの食事

そのまま道を進むと旧市街です。お店やレストランが軒を連ねています。エルメスやヒューゴーボスなどの高級店もあります。

食事時であれば、エスタミネEstaminetという食事処に行くと良いかもしれません。この地域独特の食べ物を食すことができます。かつては労働者のための飲食店でした。勝手に想像するのですが、天井は梁むき出しで壁は木目調、暖炉があってワイワイ飲んで食べて楽しんでいたようなイメージです。現在は普通のレストランですが…。

ノートルダム・ド・ラ・トレイユ大聖堂の裏手からゲント門Porte de Gandに行くゲント通りrue de Gandにいくつかエスタミネが見つかる筈です。

食事には早いようなら後で行くエスタミネを決めておき、何なら予約も入れてしまっても良いかもしれません。

エスタミネで食すことのできるこの地方独特の料理はポチェヴレーシュPotjevleesheやウェルシュWelshです。1泊2日なら2つとも味わうことができますね。

豚肉をゼリーで固め合わせたポチェヴレーシュ、付け合わせはフライドポテト

ビールと共に頂きました。昼でも結構飲んでる人が多いので違和感はありません。昼なら前菜等は取らずこのポチェヴレーシュで充分です。ボリュームがありかなり食べ応えがあります。相場としては1皿で16€前後(ビールは別)。夜ならこれに加え前菜かデザートもしくはコーヒーということになるでしょうか。

食事でなくカフェで軽く小休憩したい場合は、老舗のメールMeertという高級喫茶店が良いかもしれません。旧市街にあります。

有名なゴーフルと一緒にお茶を頂くと良いですね。食事もできるようです。その他ジャムやゴーフルを購入できるお店が併設されています。

6. シャルル・ド・ゴールの生家 Maison natale de Charles de Gaulle

食堂、そして奥はガラス屋根付きテラス

リールに来たら何と言ってもここは訪れるべきです。今でも大抵のフランス人が愛するシャルル・ド・ゴールが生まれ、幼少期を過ごした家を見学できるのですから。

ノートルダム・ド・ラ・トレイユ大聖堂裏手のモネー通りrue de la Monnaieをまっすぐ行き、プランセス通りrue de la Princesseで右に曲がると、2分ほどで右手に見えてきます。フランス国旗が掲げられているのですぐ見つかります。グラン・プラスあるいは教会裏から徒歩15分位で着く筈です。

紙媒体かオーディオガイド(英語またはフランス語)に従い、順路に沿って進みます。来客用の玄関兼待合室→居間→食堂←台所、といった風に動線がよく計算されており、そして家族用の玄関・廊下からは台所、そして2階への階段にアクセス、とても機能的、合理的な作りの家です。装飾も洗練されていてとても居心地が良さそうです。

2階はお母様の居室と、成年後シャルルが帰ってきた時の部屋、そしてリネン類を保管する部屋があります。

10時の開館を目掛けて行ったので一番乗り、他の見学人がいない状態で、良い写真がたくさん撮れました。

シャルルのお母様の居室

ベッドはアルコーヴ式(壁に埋め込む形)になっており、その右(窓側)は礼拝のための小部屋になっています。

住所:9 rue Princesse – 59000 Lille 
開館日・時間:火曜定休、10−18時。1月1日、5月1日、12月25日は閉館。
入館料:6€、26歳未満は無料。

日帰り旅行ならこの辺りで充分かもしれません。1泊2日を想定しているので、まだまだ観光はできます。

7. 宮殿美術館 Palais de Beaux-Arts

パリを除くと、フランスで有数の規模を誇る美術館の1つです。フランス革命後に亡命貴族から没収した収集品を集めて美術館としたのが始まりです。安定した国民政府が樹立すると、国家も所蔵芸術品の充実に寄与しました。1850年ごろには国家の援助に加え、個人蒐集家による寄贈も増えてきて現在見学できる芸術品が揃いました。

見学すると分かるのですが、かなり大きい絵画がいくつかあって、普通の建物では陳列できません。ということでこの立派な館が建てられ、1892年に再オープンした経緯があります。

地下は古代から中世に関する美術品、1階は各時代の陶器、2階には多くの絵画が陳列されています。15−17世紀のフランドルの絵画、19世紀のフランスの絵画が主たる作品になるので、時間を節約したいのであれば、この2階だけ見るのもありです。ルーベンスやファン・ダイクの他、ダヴィド、ゴヤ、ドラクロワ、クールベ、コローなどの作品もあります。

シティ・パス(後述)があれば切符売り場で優先的に通してくれ、切符をもらえます。

住所:Place de la république 59000 Lille
開館時間:火曜定休、月曜14-18時、火曜〜日曜10−18時
  1月1日、5月1日、7月14日、11月1日、12月25日休館
入館料:7€(16時30分以降は「ハッピーアワー」で4€)、12−29歳4€、12歳未満無料

8. パリ門 Porte de Paris

ネーデルラント継承戦争におけるルイ14世の戦勝を祝し、17世紀末に建造された凱旋門です。アーチの左には軍神マルス、右は力の象徴ヘラクレスの彫像が置かれています。上部には「名声」を表す2人の天使がラッパを吹き鳴らし、中央の「勝利の女神」はルイ14世に授けるべく右手に冠を持っています。

この戦争でフランス・ブルボン家はスペイン・ハプスブルグ家からフランドルの12の軍事拠点を奪ったのですが、終戦協定である1668年のアーヘンの和約で、ルイ14世は、イングランド、オランダ、スウェーデンの3新教国による圧力に屈し、リールを除き大部分を放棄せざるを得ませんでした(日清戦争後の三国干渉を思い出しますね。この時はフランスはドイツ、ロシアと共に干渉する側でしたが…)。

リールが正式にフランス領となった訳で、重要なモニュメントですね。1875年に歴史建造物に指定されました。

9. リール市庁舎と鐘楼

ネオ・フランドル様式の市庁舎と付属の鐘楼

ベルギー、北フランスの鐘楼群はユネスコの世界遺産に登録されています。そのうちの1つに登れる訳ですね。鐘楼とは上部に時計を備えた塔、つまり時計台のことで、先述の通り経済力をつけた市民の権利の象徴ともいうべきものです。鐘で時を知らせる教会に頼らず、市民が自分達で時間を統制し始めたという意味合いがあるんですね。

104メートルの高みからリール市を俯瞰することができます。100段の階段を登ってからエレベーターで頂上へ。

住所:
オープン:10~13時、14〜17時30分
入場料:7.50€

10〜11時は予約が必要です。グラン・プラス裏手にある観光局で予約を入れてもらい支払いも済ませるか、観光局のサイトで自分で日付を指定して予約することもできます。この場合6€と割引になります。

シティ・パスについて

美術館や観光スポットが無料交通機関も乗り放題になるシティ・パスがお得です。切符購入のために列に並ばなくて済むので時間の短縮にもなります。

24時間パス:25€、48時間パス:35€、72時間パス:45€(2024年2月現在の正規料金)。

これも観光局サイトでオンラインで購入すると割引になります。1日目午後にリールに到着して、2日目の午後にパリあるいは他の街に移動するのであれば、24時間パスで充分です。最初に使った時間から次の日の同時刻まで有効です。美術館用のパスと交通手段のパスが別々になっており、それぞれ最初に使った時間から24時間有効です。

この記事で紹介したスポットのうち有料のものはシャルル・ド・ゴールの生家6€、宮殿美術館7€、リール市庁舎の鐘楼7.5€、合計20.5€です。数€プラスするだけで交通機関のパスがもらえ、他のスポットも無料になるのだからシティ・パスはお得です。使える観光スポットの場所や入館時間、簡単な説明の入った小冊子がついています。交通機関乗り放題で入館料も無料になるので、時間があればここに載っている他の場所にも気軽に行けますね。

観光局のサイトで予約し支払いを済ませた場合も、現地に着いたら観光局窓口でパスの実物を受け取る必要があります。グラン・プラスの裏手にあるので簡単にアクセスできます。市庁舎の鐘楼に10-11時に行く場合予約が必要と説明しましたが、ここで予約してもらえます。

住所:Palais Rihour, Pl. Rihour, 59000 Lille
開館時間:毎日10:00-12:00、13:30-17:30

10. リールの地下鉄

この記事でおすすめしている場所は全て徒歩で充分周れる距離ですが、シティパスを購入する場合は交通機関のパスも同時についてくるので、試しに乗ってみると面白いかもしれません。

VAL(Véhicule Automatique Léger、軽量自動列車ほどの意)というシステムでできています。運転席はなく自動で運行されています。元々はリール大学理工学科のロベール・ガビヤール氏によって発明され、その特許は1971年7月31日に登録されました。

パリのシャルル・ド・ゴール空港にもターミナル間を結ぶ、自動運転のCDG VALというのがありますね。シカゴのオヘア空港でも導入。パリ市内ではこの技術を使った無人運転の14番線が開通してから、1番線が無人化されました。そしてトゥールーズ、レンヌ、トリノ、台北にもこの技術によるメトロが走っています。(東京の南北線は日本独自の開発によるものなのかは不明。開通の年代序列から見てインスピレーションを受けているとは思うのですが。)このように各地で導入されたVALシステムの発祥の地でオリジナルに乗るということになりますね。

ゴムタイヤが使われているので地下鉄特有のキーッという音はしないし、乗り心地も良いです(余談ですがパリ左岸を通る6番線もゴムタイヤですね)。そして2両編成のおもちゃのようなメトロです。

開通以前はリール市内は車やバスの往来でごった返し、その反面で郊外の街々は都市部から隔離されてしまっていました。この2つの問題を解消するためにリール市はメトロ開設を計画した訳です。

リール・フランドル駅は1番線、2番線ともに通っています。適当に乗るのであれば1番線、Villeneuve-d’Ascqに行くと良いかもしれません。元々はリールとこの街を結ぶために開通し、VALの語源ともなった訳ですから(Villeneuve-d’Asque – Lille)。言葉遊びと思うかもしれませんが、これがVAL(Véhicule Automatique Léger、軽量自動列車)というシステム名になったのですね。

シティ・パスを購入しなくても、1回乗車券を購入して乗ってみる価値ありですね。フランドル駅から1番線に乗って2駅、「レピュブリック-美術館駅」République Beaux-Artsで下車すれば、あまり歩かずに宮殿美術館に行くことができます。

あとがき

いかがでしたか?1泊2日で周れる厳選した10選を紹介してみました。

パリ市内からは北駅から在来線で2時間16分ほど、TGVで1時間でリール・フランドル駅に行くことができます。片道35〜70€です(SNCFのサイトで検索した所、7時51分パリ発、10時7分リール着の在来線2等席35€というのがあるようです…)。帰りはTGVで1等席でも35€前後です(リール・ウーロップ駅発とリール・フランドル駅発のものがあります。両駅は歩いてすぐの距離)。

旧証券取引所、オペラ座、商工会議所、パリ門など、外側を見るだけのものも多いので、1日で周ろうと思えば周れる規模の街です。リール市は居住地としてはずっと外側にも広がっているのですが、観光客としての必見スポットは中心部に集中しています。駅から旧市街へのアクセスも良いです(徒歩5分くらいでグラン・プラスに出る)。

でも1泊できるのであれば、宮殿美術館、リール市庁舎およびその鐘楼に行くこともできます。そして郷土料理もいくつか楽しめますね。これだけ周ればリール市を満喫したと言えます。