旅行では食事も楽しみの1つ。でもどこで何を食べれば良いのかとなると結構戸惑ってしまうのも事実。
現地に着いてから迷うことにならないよう参考情報を。
1. 食事処の種類
レストランRestaurantでなくとも、カフェCaféやブラッセリーBrasserie、ビストロBistrotで気軽に食事できます。
レストランは、日本のガイドブックに載っているような高級店もあれば、当ブログで推薦しているお店(高級店いかんを問わず実際に食事して高評価だった所)もあります。ピザPizzaやムール貝Moules等 気軽に利用できるところもあります。
2. テーブルの選択
お店に入ってBonjourと声を掛け、食事なのか飲み物だけなのかを伝えた後、店の人がテーブルに案内あるいは指定するわけですが、窓際、店内の他のお客さんからあまり遠くない所、あるいは反対に離れた所、テラス等 あなたがどこに座りたいか分からない訳で、客が見ている所を指定してくることが多いように思います。
通路の横だったりして居心地よくなさそうなら、あっちでもいい?と訊いてみるとOKしてくれると思います。
高級レストランでは予約しておくことをお勧めします。満席で入れないことを避けるのが一義的な目的ですが、予約客には良いテーブルを確保してくれ、予約なしで来た客にはあまり良くないテーブルに案内するということが往々にしてあるので。
5−8月はカラッとした気候でテラスでの食事が快適です。テラス席は禁煙ではないのでたまに喫煙者が近くに座ることもありますが。
3. 注文の仕方
3-1. セットメニュー
前菜(アントレ)Entréeと主菜(メイン)Plat、あるいは主菜とデザートDessertがセットになったセットメニューが表に表示されていることがよくあります。このセットメニューはフランス語でMenu(ムニュと発音)と言います(英語・日本語で言う「メニュー」はフランス語で la carte)。
Formule(フォルミュルと発音)とも言います。Formule déjeuner(昼食のセットメニュー)とかFormule Petit déjeuner(朝食セット)など店先に看板を出していることもよくあります。
これが食べたいんだというこだわりがなければ、セットメニューを注文すれば割安な値段で食事できます。一般的なフランス人は昼食時はこれで注文することが多いようです。
セットメニューMenuの項目にはアントレ、メイン、デザートが2〜3品ずつ表示されており、1つずつチョイスする形になります。
夜はセットメニューでなくアラカルトA la carte(セットでなく1つずつ注文)で注文する人が多いようです。実際メニューにも「セットメニューは平日の昼食のみ」と限定されていることが多いので注意すると良いかもしれません。アラカルトの場合もアントレとメイン、あるいはメインとデザートといった注文の仕方をすることが多いようです。
お腹いっぱいだけど食後に何か甘いものが欲しい場合は、デザートの代わりにコーヒーを注文しても良いかもしれません。もちろんデザートの後、目覚ましにコーヒーを追加しても構いません。
1人での食事や気のおけない友人との食事、気取っていないお店でそれ程空腹でなければ、メイン1つ、食後にコーヒー1杯でも全然違和感ありません。
3-2. 飲み物
アルコールを注文する場合、肉料理には赤ワイン、魚介類の料理なら白ワインが合うとされていますが、この他にもチーズには赤ワイン、メイン料理として食すムール貝にはビール、クレープにはシードル、タイ料理には白ワインといった暗黙の了解もあります。もちろん私はこの組み合わせが好きなのといったこだわりがある場合は無理する必要もありませんが。
気取った所でなければ、お昼は普通の水道水Carafe d’eau(もちろん無料)で全然構わないし、エヴィアンEvianやヴィテルVittel等のミネラルウォーター Eau minérale(オー・ミネラル)を注文しても良いですね。きちんとした所で夕食をとる場合はワインとミネラルウォーターを注文すると良いと思います。
ミネラル・ウォーターには炭酸入りGazeuse(ガズーズ)と炭酸なしPlate(プラット)があるので、どちらか訊いてくるので好みのものを指定すればOKです。
3-3. マナー
何かしてもらったらメルシーと言うんだよ、と日本通のフランス人から教わりました。つまりメニューや飲み物、料理を持って来てくれたら毎回メルシーと言うのがマナー(勘定を持って来た時だけは言わない)のようで、確かに日本にはない習慣ですね、軽く頭を下げることはあっても。フランスで最も高評価の観光客と言えば日本人、この地位を守りたい所です。
チップは5%が相場のようです。休憩がてらコーヒー1杯だけ頂く場合等は置く人と置かない人で別れるようです。例えば1ユーロのお釣りがあった場合にわざわざ10セント硬貨や20セント硬貨を混ぜて渡して来たら、期待に答えて5%前後で切りのいい額をテーブルに置いていくと良いと思います。もちろんおつまみをサービスしてくれたとか特別に感謝したい場合は10%渡すのも良いですが。赤い通貨(1、2、5セント)は絶対に置かないこと。割り切れなかったら少し多めにして切りのいい数字にすれば良いのです。アメリカ人のように10%置いても全然違和感ありません。
これらの赤いコインは自然に溜まってしまいますが、邪魔ならスーパーで買い物する時に使うのが良いと思います。実際にはこれらの小銭でようやく支払いができるという状況もままあり、スーパーであれば問題ありません。
路上生活者にこれら赤い硬貨(1、2、5セント)を上げるのは少し気が引けます。50セント、1€、2€硬貨をお渡しするのが良いと思います。実は20セント以下の小額貨幣は、貯金箱に入れて、溜まったら(数年に1度)郵便局など所定の場所に持っていき寄付するフランス人が多くいます。元大統領夫人(マダム・シラク)の提唱により広まった制度で、入院中の子どもの側に住む必要のある親の住居を建設する資金に充てるのが目的です。各地で集まった貨幣はフランス中央銀行に集められ、ここからアソシエーションに小切手が渡されます。こうやって循環しているのか、と妙に納得したことがあり、つい詳細を書いてしまいました…。
4. 専門店
4-1. ムール貝
涼しい気候や寒い時に食べたくなるのがこれ。また食費を抑えてガッツリ食べたい場合はピザかムールですよね。
Moules Marinière(漁師のムール貝)が定番です。大抵フレンチフライFritesが付いてくるので、これにビールを追加すればスタンダードな食事になります。
Léon de Bruxellesというチェーン店なら味も品質も安定していますよ。ニースやマルセイユなどの南仏では見かけませんが。チェーン店に限らずカフェでこれを出す所も結構あります。
4-2. クレープ
ブルターニュ地方(フランス北西部、レンヌやモンサンミッシェル)に行ったら一度は試してみたいところ。昼食でも夕食でもよし。レストランのメニューにクレープがあるのではなく、クレープを専門とするレストランで食します。
フランス人も「クレープを食べに行こう」とか言いますが、メニュー上、お肉や温野菜が載っているメインはガレットGalette (de sarrasin)、デザートはクレープCrêpe (fromant) として表示されています。ガレットとクレープを1品ずつ、これにシードル(リンゴ酒)を頼むのが一般的なクレープの食事。2人ならシードルをボトルで1本取っても良いし、1杯だけで充分ならボレーBolée(ワインの場合のグラス・ワインに相当)を頼めば良いです。
ガレットはそば粉がベースで、茶色っぽい色、四角く折りたたんだ形で出されることが多いようです。キノコやベーコン、トマト、卵等いろんな組み合わせのものが店の方で用意されていますし、好みがはっきりしていて自分で食材を組み合わせたい人はそれぞれ指定して注文する方法もありますが、これは外国人にはちょっとハードルが高いかも。
クレープは小麦粉ベースで明るい色、丸いまま出てくるのが一般的です。これもリンゴや西洋梨、バターやキャラメルでアレンジされたものがいくつか用意されてありますが、これも素材を自分で選ぶこともできるようになっている場合があります。オススメはアーモンドをベースとしたフランジパンFrangipan、あるいはバター・キャラメル。ブルターニュのバターやキャラメルの質は特筆に値するので、是非試してみてください。
4-3. ピザおよびパスタ
少し節約したいけどしっかり食べたい時に心強いのがピザ。もちろん高級なイタリアン・レストランでも食すことができますが、PIZZAと表示されたレストランならお手頃な価格の所が多いようです。ピザはどうも重くて苦手という人はスパゲッティやリゾットもあるので、日本人にはありがたいですね。
日本で慣れ親しんでいるような、パン生地の分厚くてふんわりしたピザ(アメリカ風)ではなく、焼き加減によってはパリッとした薄い生地(本家イタリア流)です。1人1枚注文するのが普通で、場合によってはサラダを1つ取ってシェアするのもありですよ。
デザートもティラミスやパンナコッタ等知っているものがあるので安心です。
4-4. サラダ・バー
若い世代を中心にフランスでもヴィーガン(完全菜食主義)が急速に広まっています。これを受けて最近よく見かけるようになった食事のスタイルがサラダ・バーとも呼ばれるもので、これはアルコールを飲む場所としてのバーではなく、いく種類かのサラダを自分で好きなように組み合わせるシステムを指します。
サラダ・バー専門のカフェで食すことができます。大抵はSaladeの文字が店名に含まれており、緑や白を基調としたロゴで店名が表示され、明るい色調でオープンな雰囲気の店内になっている所が多いようです。
キヌアやライス、レンズ豆やショートパスタ等ベースとなる食材をまず選び、これに乾燥トマトやアヴォカド、コーンや人参等3−4種類を組み合わせ、好きなドレッシングをかける形で、口の広い丼で出されることが多いようです。
お客さんはヴィーガンのみに限定している訳ではないので、ゆで卵やチーズを選ぶこともできます。またベーコンを置いてあるところもあります。
ヴィーガンでなく、魚の切り身が含まれるものはポケ・ボウルPoke Bowlと呼びますね。ポケモンを連想してしまうのですが、当然関係はありません。ハワイ発祥の料理です。これの専門店もあります。
4-5. サラダ・コンポゼ Salade composée
カフェのメニューにあることが多いようです。
ミックスサラダですね。コンポゼは「組み合わせ」程の意。レタスをベースにトマトや人参、とうもろこし、チーズ等を組み合わせたサラダが何種類かあり、夏の昼食であまり重くないものを食べたい時はこれがいいかも。サイドディッシュではなく、1食分の食事です。
無料で出てくるパンと一緒に食します。
アンチョビーとオリーブ入りのニース風サラダSalade nicoise やチキンとチーズを含むシーザーサラダ等が有名ですね。カフェやブラッセリーで食すことができます。お昼ならこれ1品と食後のコーヒーだけで充分です。
4-6. 生牡蠣
Rのつく月は牡蠣が旬であると言われます。英語でもフランス語でもRが含まれる月、すなわち9〜4月は特に牡蠣が美味しいとされています。
魚介類の盛り合わせで、牡蠣を中心にエビや貝、お好みで蟹を組み合わせます。上の写真ではウニもあります。高級料理とされ、白ワイン1本頼んで2人で80〜100€ほど見込んでください。お勧めです。
セットになったものがメニューにありますから、初心者であればこれを注文するのが無難です。食べ慣れた人は単品を組み合わせてオーダーします。上の写真は好きなものを組み合わせて注文したものです。
パリであればバスティーユ界隈のBofingerか、チェーン店のBar à Huitresで食すことができます。マルセイユでお勧めのレストランは別記事にまとめてあるので、ご興味があればどうぞ。
5. アペリティフ
春から夏にかけてフランスの気候はとても快適で、16時以降になると多くの人がカフェのテラスで友人や同僚とビールを飲んでいる姿を目にします。フランスだからビールなんて飲まないかと思いきや、フランス人て結構ビールが好きなんですね。無料でおつまみを出してくれる所も多いのがありがたいです。瓶ビールやジョッキで注文する人はあまりおらず、ジョッキの半分の容量のハーフ・グラスDemiで飲む人が多いようです。
5-1. ビールの注文
銘柄としては1664(セーズ・サン・スワサント・キャトル、略してセーズと言えば通じる)、Kronenbour(クロナンブール)、Heineken(アイネケン)、Leff(レフ)他、銘柄を聞いてくるので指定します。「〜を下さい」はフランス語で「〜, s’il vous plâit(シルヴプレ)」。
銘柄の指定ですが、2番目に答える人は「アイネケン・プール・モワ Heineken pour moi.」位に言えば良いでしょう。
銘柄でなく、「ブロンド?ブリューヌ?ブランシュ?」という具合にビールの種類で訊いてくることもあります。順番に普通のビール、黒ビール、白ビール。日本で普通に飲むビールに相当するのはブロンド。でもせっかくだから黒や白も飲み比べてみるのも良いかも。
17〜20時の時間帯はHappy Hour(アッピー・ウールと発音する人が多い)をやっているお店も多くあります。1杯の値段で2杯飲めるのでお得なあのサービスですね。ハーフ・グラスDemiの値段でジョッキが出てくるシステムの所が多いようです。「ユヌ・ビエールUne bière、シルブプレ」と注文すれば良いでしょう。
あと食事の場以外での赤ワインは飲んべえのような印象を与える恐れがあるので、ビールよりワインという方はロゼか白ワインの方が無難です。
反対に、アルコールよりもソーダっぽい飲み物が飲みたい時、特に夏、そんな時パリジャン(男性)はパナシェ(panaché、ビールを炭酸ソーダで割ったもの)、パリジェンヌ(女性)はモナコ(monaco、ビール炭酸ソーダ割りに赤いザクロ・シロップを加えたもの)を頼んでいるようです。
5-2. チーズやハムの盛り合わせ
飲み物だけでは物足りない場合は、チーズの盛り合わせAssortiments de fromages、ハムの盛り合わせAssortiments de charcuterie、あるいはその2つのミックスを注文すると良いです。でもこれが意外とヴォリュームがあって満腹になってしまうんですよね。
軽いディナーの1つの選択肢としても良さそうです。2〜3人で1つ注文、ついてくるフランスパンに乗せて食します。レストランで食後のチーズを頂くときは赤ワインが一般的ですが、上記の通りアペリティフで赤ワインはあまり上品でない印象を与えてしまうことも。アペリティフで頂く場合ビールでも全く違和感はありません。
チーズの盛合わせの場合、3−4種類のチーズが出てくると思います。フランス人は、舌あたりの柔らかいクリーミーなカマンベールやブリから始めて、固めのグリュイエールやコンテ、その次は少し癖のある羊のチーズ、最後に一番味の濃いブルーチーズと食べ進めるようです。
一緒に出てくるバターは固めのチーズ(上記で言えばグリュイエール等)を載せる前にパンに塗るようで、クリーミーなチーズを載せる前には使わないようです。
あとがき
如何でしたでしょうか? 暗黙の了解とか、現地の習慣というものがあるので外国人には説明されないと分からない部分も多いことと思いますが、少しでもクリアになったら嬉しい限りです。
マナーのことは説明してくれる人はあまりいません。非常識とか育ち云々といった判断を下されて終わりです。なので一応知っておいた方がいいかな、という感じで書きました。押し付けがましく感じないで頂けたらと思います。
最後に、お腹がそれ程減っていない時の対処法について。お昼に食べ過ぎて、お腹が減っていない時は、夜はアペリティフで済ますか、スーパーでサラダやパン、飲み物を買ってホテルで食すというのもありですね。チーズやヨーグルトなんかも品揃えが充実しています。チーズはクリーム系(カマンベールやブリ)以外にも羊brebisのものがお勧め(ヤギのように臭味は強くない)。デザートもヨーグルトだけでなくフロマージュ・ブラン(直訳すると「白チーズ」)も美味。スプーンやコップを日本から持っていくと良いかもしれません。